最近、外来で
「このクリニックでは、風邪はみてくれるんですか?」
「聖マリアハートクリニックは、循環器専門のクリニックだから、風邪はみてくれないと思っていました」
との声をよく耳にします。
当クリニックは、一般内科の診療もおこなっておりますので、当然、風邪の患者さんも受診しております。それどころか、風邪は、外来で診察する一番多い疾患です。
そこで、今回は、風邪について書いてみたいと思います。

風邪って何ですか?

    くしゃみ、鼻水、咳、のどの痛み、発熱、倦怠感などの症状がある場合すべてまとめて、”かぜ症候群”といっています。
    急性の鼻炎、咽頭炎、気管・気管支炎の総称です。

原因は何ですか?

    普通感冒の原因は、ライノウイルスを筆頭とするウイルス感染がほとんどです。二種類以上のウイルスが重なって発症する場合もあります。
    他の原因となるウイルスとして、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス等があります。

どういう症状ですか?

•鼻粘膜の炎症(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)
•喉痛
•咳
•発熱(37〜38℃台)
•頭痛
•腹痛
•下痢

大体1週間程度で治ります。インフルエンザより症状は弱く、発病もゆるやかです。

治療は?

ウイルスを根治する薬剤がまだないため、各症状への対症療法が中心となります。一般療法として、安静、水分補給、保温等をほどこしつつ、解熱、鎮痛、咳止め等、各症状に合わせた薬剤を飲むのが、最も効果的な治療法となります。

風邪の時は病院に行った方が良いですか?

アメリカ内科学会(ACP)がエビデンスを集めてまとめた論文では次のように書かれています。

【自宅療養でいい症状】
38℃以下、鼻汁が透明感がある、咽頭痛が軽度、咳嗽が経度

【病院を受診した方がいい症状】
39℃以上、鼻汁が黄色か緑色、咽頭痛が激しい、咳嗽が激しい、38℃以上で他の症状も見られる時、65歳以上、糖尿病、慢性呼吸器疾患、心疾患、腎臓病などの基礎疾患がある場合

ただし、早く症状を取りたい場合、高齢の場合、他の病気をもっている場合には、医療機関を受診した方がいいでしょう。

抗生物質は必要ですか?

ほとんどすべての風邪はウイルスで起こります。抗生物質は細菌を殺すのには有効ですが、ウイルスには全く効果がありません。
ほとんどの場合は不要です。逆に副作用の害の方が多いというエビデンスもあります。
ただし、高齢だったり、他の病気をもっていたり、ウィルス以外が原因の時は必要になることもあります。

風邪をひいて病院を受診する患者さんのなかに、「早くなおしたいから注射をしてほしい」という方がいます。注射をすると本当に早く風邪がなおるのでしょうか?

残念ながら、注射をしたからといって、風邪が早く治ると言うことはありません。風邪をなおす薬はまだできていません。風邪の場合、対症療法といって症状を和らげる薬と、風邪のウイルスによって傷害を受けた気管支から細菌が侵入して起こる肺炎などの合併症を防ぐための薬を使うのが一般的です。これらの薬は、内服薬で十分であり、むしろ内服薬の方が種類も多く、治療効果も上と考えられます。風邪で注射を依頼された場合、ビタミン剤などを使用することが一般的でしたが、現在ではこのようなビタミン剤の使用は認められておりません。また、抗生物質を注射で投与するというのは、明らかな細菌感染症で重症の場合を除き、治療効果・副作用の点からも望ましいことではありません。医者に行って注射をしてもらったから元気がでたと言うような場合は、心理的な効果がプラスされているものと思われます。