本日、電話で「授乳中のインフルエンザ予防接種は可能でしょうか?」という問い合わせがございました。
国立感染症情報センターのインフルエンザ Q&A(2008年度版)によりますと可能とのことです。

授乳期間中でも、インフルエンザワクチンを接種しても支障はありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンというタイプで、病原性をなくしたウイルスの成分を用いているため、ウイルスが体内で増えることが無く、母乳を介してお子さんに影響を与えることはありません。また、母親がワクチン接種を受けることで、乳児へのインフルエンザの予防効果を期待することもできません。授乳期間中にインフルエンザウイルスに感染した場合も、このウイルスは主に気道系の上皮細胞で増殖しますので、血液中にウイルスが存在することは極めて稀です。また、存在した場合でも非常に微量であると言われています。したがって、母乳中にインフルエンザウイルスが含まれ、母乳を介して乳児に感染を起こすことはほとんど無いと考えられます。

しかしながら、母親と乳児は日常から極めて濃厚に接触しているため、母親のインフルエンザ罹患中には、母乳とは関係のない感染経路によって、乳児に感染する可能性が高いのではないかという不安の声も聞かれます。確かに、インフルエンザは主に発病者の口から発する飛沫で感染するため、1~2メートルという近い距離での濃厚接触によって、感染の危険性が増加するというのは事実ですが、母乳が乳児にとって極めて重要であるというのも事実です。また、インフルエンザ患者は発症前からウイルスを排出しているので、発病した母親が体調の異常に気付いたときには、すでに乳児にもインフルエンザウイルスが感染している可能性があります。一方では発症後の方がウイルス量は多いので、感染の危険性は増大するという指摘もあります。こういったことから、個々の状況に応じて現実的に対応することが必要でしょう。少なくとも、赤ちゃんに接触する前には飛沫が付着している可能性が高い手をしっかりと洗っておくことや、授乳時にはマスクを装着するなどできるだけの予防策をとることは合理的な方法でしょう。

なお、抗インフルエンザ薬を使用した場合は、動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されていることから、授乳を避けることとなっています。