心筋症

拡張型心筋症 Dilated Cardiomyopathy,DCM

■概要 拡張型心筋症は左室の著しい拡張とびまん性の収縮不全を特徴とし、重症心不全の合併や、致死性不整脈による突然死、各種臓器への血栓塞栓症をきたす予後不良の疾患。 ■病因•病態生理 •遺伝性、ウイルス感染、免疫異常、中毒などの関与が考えられている。 •約20%に拡張型心筋症の家族歴があることや、若年発症の拡張型心筋症にジストロフィン遺伝子の変異を認めたとの報告がある。 •慢性ウイルス感染の関与も示唆されている。 •心筋細胞の肥大、核の変形、間質の線維化などが認められる。 心筋症:心筋症は、心機能障害をともなう心筋疾患と定義され、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、不整脈原性右室心筋症および分類不能の心筋症に分類されている。 1. 拡張型心筋症 Dilated Cardiomyopathy,DCM 2. 肥大型閉塞性心筋症 Hypertrophic Cardiomyopathy,HCM 3. 拘束型心筋症 Restrictive Cardiomyopathy,RCM 4. 分類不能の心筋症 Unclassified Cardiomyopathy 1. 拡張型心筋症 Dilated Cardiomyopathy,DCM ■概要 拡張型心筋症は左室のいちじるしい拡張とびまん性の収縮不全を特徴とし、重症心不全の合併や、致死性不整脈による突然死、各種臓器への血栓塞栓症をきたす予後不良の疾患。 ■病因•病態生理 •遺伝性、ウイルス感染、免疫異常、中毒などの関与が考えられている。 •約20%に拡張型心筋症の家族歴があることや、若年発症の拡張型心筋症にジストロフィン遺伝子の変異を認めたとの報告がある。 •慢性ウイルス感染の関与も示唆されている。 •心筋細胞の肥大、核の変形、間質の線維化などが認められる。 ■症状 心不全症状:労作時の呼吸苦や易疲労感➡安静時や夜間の発作性呼吸困難 不整脈の合併:動悸、脈の乱れ、高度徐脈によるめまい、意識消失 脳梗塞、脳塞栓の合併;突然の機能性麻痺や呼吸苦 身体所見:肺うっ血による湿性ラ音の聴取、頸静脈怒張、肝腫大、下肢浮腫 ■診断 a. 胸部X-P:心拡大、肺うっ血、胸水の貯留 DCM/xp b. 心電図:非特異的なSTーT変化、伝導障害によるQRS幅の増加、P波の心房負荷所見、心室性期外収縮、心房細動、心室頻拍などを合併する場合がある c. 心エコー図検査:びまん性の左室壁運動低下、左室駆出率(LVEF)の低下、左室拡大、左室拡張末期径(LVDd)の増加、左室拡大にともなう二次性の僧帽弁逆流、左室内血栓の合併 d. その他の特殊検査:心臓カテーテル検査:冠動脈疾患の鑑別、心筋生検による病理診断、MIBG心筋シンチグラフィーは、心臓交感神経機能を評価 ■治療、経過•合併症、予後 •心不全合併に対して a. 利尿薬 b. ジギタリス製剤 c. 硝酸剤 d. ACE阻害薬:前負荷、後負荷軽減に加えて心筋保護作用による予後改善効果がある e. β遮断薬:心機能改善、生命予後の改善:血圧低下、心不全の増悪に注意。少量から開始し維持量まで漸増していく。気管支喘息、高度徐脈例には禁忌。 f. アンギオテンシンII受容体拮抗薬 g. 抗アルドステロン薬 •心房細動合併に対して a. 抗不整脈薬や電気的除細動にてリズムコントロール b. ジギタリス製剤によるレートコントロール c. 重症不整脈を認め、抗不整脈薬治療困難例に対しては、突然死予防目的に植え込み型除細動器(ICD)の適応も検討 d. 血栓塞栓症に対しては、ワーファリンによる抗凝固療法を行う •十分な薬物療法を行っても、心不全のコントロールが困難な場合には、心臓移植が最も有効であるとされるが、わが国は普及率が低く非現実的。 •代替療法としての非薬物療法 a. Batista手術 b. 僧帽弁置換術、弁形成術 c. 大動脈内バルーンパンピング(IABP) d. 経皮的心肺補助法(PCPS) e. 心臓再同期療法(CRT) c. dは循環動態の改善が望める場合に限り一時的に併用される。 拡張型心筋症の生命予後は不良とされ、5年生存率は50%程度との報告がある。しかし、近年ACE阻害薬やβ遮断薬などの予後改善薬の普及に伴い、生存率の向上が見込まれている。 ■患者指導 •塩分、水分管理にて体重増加に留意 •浮腫、息切れなどの心不全増悪の徴候を認めるときは、早めに診察をうけるように指導 •ACE阻害薬やβ遮断薬などの予後改善薬にて生命予後の改善が十分期待できるため、休薬しないよう服薬の継続を指導