三尖弁狭窄症(tricuspid stenosis;TS) ■概念 三尖弁狭窄症は三尖弁口が狭くなり、拡張期に右房から右室へ血液の流入が障害される。 ■病因•病態生理 ・主にリウマチ性であるが、そのほかの原因としてカルチノイド症候群がある。 ・実際に臨床では三尖弁狭窄単独は稀であり、リウマチ性でも三尖弁自体に病変を認める頻度(5〜15%)は少ない。 ・右房内腫瘍(粘液腫など)や大きな右房内血栓で拡張期に三尖弁口を塞ぐような場合、血行動態的に三尖弁狭窄状態となることがある。全身から静脈還流が障害されて、右房圧は上昇し、末梢の浮腫や腹水などの右心不全症状を生じる。 ■症状 ・右房圧や静脈圧の上昇により、頸静脈怒張、肝腫大、腹水、下肢の浮腫などが出現する。低心拍出のため全身倦怠感をともなう。 ■検査と診断 ・心エコー図検査:リウマチ性では三尖弁の硬化や肥厚で開放制限を認める。ドプラ法では三尖弁通過血流速度の増大を示す。 ■治療 ・浮腫や腹水などには安静、減塩、利尿薬を投与する。内科的には治療困難な場合は、合併する僧帽弁や大動脈弁疾患の手術と同時に、三尖弁交連切開術あるいは弁置換術を行う。