1医療面接(問診)
(1)主訴
a.胸苦しい:最も心臓疾患を疑う症状である。

b.胸が痛い(胸痛):虚血性心疾患、心筋周囲の炎症、大動脈解離、胸膜炎、肋間神経痛、食道や胆嚢の炎症などいろいろな原因がある。

①狭心症
•労作性狭心症:労作時に出現、持続時間は2~5分程度の短時間、安静で軽快する、ニトログリセリンで軽快
•冠攣縮性狭心症:日本人に多い、飲酒、過呼吸や洗面で誘発、深夜から明け方にかけて就寝中に胸痛が出現することが多い

②心筋梗塞
•絶望感を伴う激しい胸痛、20分経過しても軽快しないときは心筋梗塞の可能性が高いので救急措置が必要
•高齢者では不整脈が主な症状となる場合もある
•糖尿病を合併している場合には、神経障害のために痛みを感じない場合もある
③解離性大動脈瘤:痛みは胸から背中、または背中から胸へと広がることが多い。鎖骨下動脈を巻き込むと上腕血圧や脈圧に左右差が生じる。

④気胸
•健康で身長が高いやせ形の青年が、労作などをきっかけにして急に胸が痛くなった場合は自然気胸を疑う
•外傷に伴って生じ、急速に息苦しさが増す場合には緊張性気胸が疑われるので救急措置を要する

⑤肋間神経痛:肋骨の下縁にそって痛みが出現。

⑥逆流性食道炎:過食した場合などに胃酸が食道に逆流して生じる。高齢者に多く、狭心症と区別しにくい場合がある

c.息苦しい(呼吸困難)
①急性肺塞栓症
②各種の疾患により生じた心不全:左心不全→左心室から血液が体循環に流れなくなるので、右心室から通常の量で送られてくる血液は、肺血管に溢れるようになり酸素との交換ができなくなって苦しくなる。
•患者は寝ていられなくなり、上半身を起こして坐位のまま朝まで起きていることもある。うっ血した肺でも坐位になることで、肺の上部の血液のうっ滞が軽減され呼吸が楽になるためで、これを起座呼吸という。
夜間発作性呼吸困難(左心不全でよくみられる症状)

d.手足がむくむ(浮腫)
•解剖学的に左下肢は右下肢よりむくみやすい。
•下肢の浮腫:右心不全、左心不全→右心不全も起こし両心不全になった場合
•同時に肝臓も腫れることや、消化管の浮腫により下痢を起こすことがある
•腎疾患に由来するときは、眼瞼や顔の浮腫が出現しやすい

e.ふらつき(失神)
①頻脈性不整脈:上室性頻拍症(ふらつき)、心室細動(意識消失発作→持続する場合は死に至る)
②徐脈性不整脈:完全房室ブロックや洞停止、迷走神経の過緊張→高度な徐脈になり失神することもある。
③肥大型閉塞性心筋症:左心室の流出路に狭窄があり、興奮するとカテコールアミンにより左心室の収縮力が増すために、なおさらに流出路の狭窄が強くなり失神する

f.どきどきする(動悸)

g.症状の聞き方
•今日はどのようなことでいらっしゃいましたか。
•胸が痛いことはありませんか
•息苦しいことはありませんか
•苦しいことは、どのようなときに起こりますか
•苦しいことは、どのようにしているとよくなりますか
•症状はいつごろからありますか
•症状は始まったころと現在ではどのように違いがありますか等

(2)現病歴(起始および経過)
病状の時間経過を聞くことは重要である
a.労作に伴うもの:労作性狭心症、心不全、不整脈など
b.安静時に出現するもの:冠攣縮性狭心症、不整脈
c.突然起こるもの:虚血性心疾患、不整脈:致死的不整脈が出現すると、左心室の収縮が不完全になるために、十分な血液を体に送り出せなくなり死に至ることがある
d.徐々に出現したもの:各種疾患による心不全などは、徐々に原因となる疾患が悪化して生じる

(3)既往歴:危険因子(リスクファクター)の有無、川崎病の既往の有無、リウマチ熱の有無を聴取する。
•危険因子:糖尿病、高血圧、高脂血症、タバコ、ストレス、タイプAの性格、肥満、高尿酸血症、年齢が50歳代の男性
•リウマチ熱:6~15歳ごろに咽頭の感染症であるA群β溶血性連鎖球菌感染の後2週間ほどで関節痛が出現したか、発熱はあったなどを聞く必要がある

(4)個人歴
a.何かもとになっているものはないか
•リスクファクターの有無
•タイプAの性格
b.嗜好品:喫煙歴、飲酒など
c.薬物使用:治療中の疾患を知ることができる
d.生活環境