症状と病態生理

1 胸痛
胸痛とは胸部における漫然とした不快感、圧迫感、激痛など。精神•心理的要因も関与
ポイント:
•発症が急激か緩徐か、発生源が心臓か肺か?
•筋骨格系由来の胸痛も頻度が高い

発症が急な心疾患:狭心症、急性心筋梗塞、大動脈解離
発症が急な肺疾患:自然気胸、肺塞栓、
発症が緩徐な心疾患:心膜炎
発症が緩徐な肺疾患:肺炎、胸膜炎、肺がん、胸膜中皮腫

胸痛をきたす心疾患
a. 虚血性心疾患
①狭心症
②不安定狭心症
③急性心筋梗塞

b.その他の疾患
①心膜炎
②大動脈解離

2 呼吸困難
呼吸困難の概念:呼吸にともなう不快感や努力感などの自覚症状を総称して、息切れあるいは呼吸困難とよぶ。実際には、「息がきれる」「ハーハーする」「息がつまる」「空気が足りない」などと表現される。また、自覚症状のため性格や情動なども関与する
New York Heart Association (NYHA)分類がよく知られている(I度~IV度。覚えておく)

考えるべき疾患
心疾患:うっ血性心不全(急性心筋梗塞、弁膜症、心筋症➡心不全)
閉塞性肺疾患:上気道閉塞、肺気腫、気管支喘息
拘束性肺疾患:肺線維症、結核後遺症
過換気症候群

•緊急な対処を要する疾患(呼吸困難):肺塞栓症•肺梗塞、緊張性気胸、急性心筋梗塞、異物吸引
•気道内異物などによる気道閉塞と緊張性気胸では、即、救命措置が必要となる。
•起座呼吸の場合は左心不全や重症の喘息発作を考える

医療面接で聞くこと
突発性か?
どの程度か?
次第に程度が強くなっているか?
労作性か?
発熱、咳、痰、胸痛、動悸をともなうか?
起座呼吸か?
慢性副鼻腔炎などの既往の有無
喫煙歴、職業歴、ペットの飼育なども聞く

身体診察で注意する点
チアノーゼの有無
頸静脈怒張の有無
呼吸の規則性
呼吸回数
呼気の延長
喘鳴
呼吸音の消失•低下
心雑音の有無
下腿浮腫の有無

3 動悸
概念:動悸とは、心拍数の増加、心拍リズムの不整、拍動の増強が生じたときに、心臓の拍動を不快と自覚すること

考えるべき疾患
a.不整脈
①期外収縮
②発作性頻拍症
③心房細動•心房粗動
④徐脈性不整脈

b.器質的心疾患によるもの
①弁膜症
②虚血性心疾患:狭心症、急性心筋梗塞

c.心臓以外の疾患によるもの
①甲状腺機能亢進症
②低血糖症
③褐色細胞腫:頭痛(pain)、動悸(palpitation)、顔面蒼白(pale)、発汗(perspiration)、高血圧(pressure)などの症状を認める。血中および尿中カテコラミンの測定や腹部CT、またはMRIで副腎腫瘍を認めることで確定診断できる
④感染症
⑤貧血
⑥薬物などによる中毒症
⑦神経症

4 浮腫
概念:浮腫とは、細胞外液量、特に組織間液(間質液)の量が異常に増えた状態を指す。水腫ともいう。
➡顔が腫れぼったくなる、足がむくむなどの症状があらわれるが、脛骨前面を圧迫したときの圧痕や体重増加などが客観的な徴候となる。

考えるべき疾患
a.全身性浮腫
①うっ血性心不全
②肝硬変
③急性糸球体腎炎
④ネフローゼ症候群
⑤腎不全
⑥甲状腺機能低下症
⑦特発性浮腫
⑧その他の全身性浮腫

b.局所性浮腫
①静脈やリンパ流の障害:乳がん手術リンパ節廓清後のリンパ管閉塞による浮腫
②血栓性静脈炎による浮腫
③片麻痺:麻痺側に浮腫がみられることがある
④フィラリア

病態生理:局所因子+全身因子
局所因子:静水圧上昇、膠質浸透圧低下、毛細血管透過性亢進
全身因子:抗利尿ホルモン(ADH)分泌亢進、レニン•アンギオテンシン•アルドステロン系亢進、交感神経活動亢進

5 その他の症状(めまい、失神、ばち指、チアノーゼ、)
めまい、失神:心疾患、徐脈性不整脈、起立性低血圧
ばち指:右→左短絡血流をもつ先天性心疾患
チアノーゼ;還元ヘモグロビン5g/dℓ以上になると出現:先天性心疾患で右→左短絡がある場合、肺での酸素接種障害、末梢循環不全